クリス・ベノワのこと

息子さんがフラジャイルX症候群だったとか、ステロイドを処方した医師が捕まったとか、ステロイド以外の違法薬物を使ってたとか、ECWへ移籍になったことで給料が減るんじゃないかと心配してたとか、失礼な憶測・噂込みのどうでもいい記事が溢れ返らんばかりに報道される中、そしてWWEでもTNAでもトリビュートが禁止される中、わたしのような一ファンはどう悲しんだらいいのか、どう悼んだらいいのか、エディの時のように涙も流せず、かといって彼をただの殺人鬼として捉えることなんてできず、感情の置きどころを完全に失っていたのですが、今週の週プロに載ってたTAJIRIさんのコラムを読んでやっと泣けました。少しだけ気持ちを整理することもできて、本当にありがたかった。落ち着いてコラムなんて書ける状況じゃなかっただろうに……。
TAJIRIさんの言う通り、ベノワはかわいそうだ。エディはエディのまま逝ったけど、ベノワはわれわれファンが知ってるベノワでないばかりか、親しい人の知っている彼自身ですらない姿で旅立たなきゃならなかった。追悼メッセージは取り消され、トリビュートは禁じられ、涙すらしてもらえない。よりによってベノワがこんな最期を迎えなきゃならないなんて。
数年前のサマースラムで、ランディとのタイトルマッチに負けた後、ベルトを抱きしめて泣いてるランディに「Be a Man!」と言って握手を求めたことが、そのときの表情が忘れられない。バックステージに戻ったときにエディが駆け寄ってきたことも。エディが亡くなったときはどれほど辛かっただろう。
エディのときも同じようなことを書いた気もするけど、どんな最期だったとしても、彼は世界中の人びとの心に長く残り続ける数少ないレスラーのうちの一人であり、一人の人間としても誠実で立派だったと思う。レスラーとしてのベノワがもう見られないのもさみしいけど、彼自身がもうこの世にいないのだと思うと、なにかが崩壊してしまいそうなほどに悲しい。