ダンディイイイイ

英雄ここにあり―三国志 (下) (講談社文庫)

英雄ここにあり―三国志 (下) (講談社文庫)

昨日読みオワタ。最後の方すっ飛ばしすぎ。赤壁終わった時点で残りページが幾許もなかったから関羽が死ぬところで切るつもりなのかな?と思ったら出師の表で〆られてました。変な切りかた。著者は諸葛亮が決然たる覚悟で出師の表を書き北伐におもむく場面を書きたくて筆を取ったそうで。猛獣vsメカ怪獣大決戦の南蛮行は一文で終わってたところが残念w
全体的な印象としては、奇をてらっていないごく普通の、でもとてもよく出来た三国志演義ベースの小説に、ハードボイルド小説の登場人物のような諸葛亮がそのまま乗っかっているような感じ。他の人よりはるか遠くを見通し、そのためにどんなに悲しいことがあっても涙も見せず、主君を栄華に登り詰めさせたときも死んでいった無辜の民や兵士の悲しみに一人で思いを馳せ、感情を押し殺し病弱なおのれに鞭打って使命をまっとうしようとするハードボイルダー(なんだそれ)・孔明。みたいな。著者はおそらく諸葛亮をかっこよく書きたくてこうしたんだろうけど、物語自体にそういう現代的な?描写をされたキャラクターを生かしきれる装置が皆無だったので(何しろ諸葛亮の心理描写以外の場面はこれ以上ないくらい「とてもよく出来た三国志演義ベースの小説」なのだ)、彼という人物がそっくりそのまま小説から浮く形になっている。それをやるんなら物語自体を全部ハードボイルドにすればよかったのにと思ってしまう。吉川英治諸葛亮が、最初こそ厩戸王子(山岸凉子の)みたいな薄ら笑いを浮かべた得体の知れない超能力者もどきかつ自己アピールに余念のないイヤなヤツだったのに、年をとるにつれて厩戸王子ではなくなってなんだか普通の人になり小説世界(というか世間?)に馴染んでいってしまう過程が、きわめて自然な筆致で描かれていたのとは対照的でした。それだけスキなのでしょう。そういう話とは別に、私はどうもヤツの、劉備以上の偽善者っぷりが鼻について仕方がなかった。ムキー!
しかし曹操の書かれ方には激しく不満が残る。…あんまりスキじゃなかったんだろうな('A`)