うたうこといきるのよ

諸葛孔明―影の旋律

諸葛孔明―影の旋律

某書評で大絶賛されたので借りてきた。「影の旋律」なんて小説的なタイトルだからてっきりIFものだと思ったら、意外と真面目な正史の評論でした。しかも陳寿の正史本文を読み解くことに主眼を置き、正史の注や後の批評なんかも引用して、「諸葛亮伝」の簡潔な文章の中にひそむ、陳寿の本当のねらいを考察しています。良書!中国の歴史書の読み方なんかも分かって面白いです。演義が実は諸葛亮を美化するだけでないものだった、という見方なんかも、思わず「ほっほーん」とため息をついてしまうほど興味深かったです。学術的に正しいのかどうかは分かりませんが(十五年前の著作なので反論受けてるかもしれんし)、自論を展開する際に「陳寿の文を第一に尊重する」という姿勢が終始一貫しているので安心できる。本当に諸葛亮がこの本で読み解かれたような人だったら、どの小説に描かれた孔明像よりも人間的で魅力的だ。だめじゃん小説家orz まあほぼ同時代を生きた人の、対象に愛のある伝記には勝てん気もするけど。