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孟嘗君(1) (講談社文庫)

孟嘗君(1) (講談社文庫)

孟嘗君(2) (講談社文庫)

孟嘗君(2) (講談社文庫)

孟嘗君(3) (講談社文庫)

孟嘗君(3) (講談社文庫)

孟嘗君(4) (講談社文庫)

孟嘗君(4) (講談社文庫)

孟嘗君(5) (講談社文庫)

孟嘗君(5) (講談社文庫)

序盤から中盤までずーっと白圭が主人公で、孟嘗君がいつまでも子供だったので、これは「盛名を得るまでの若き日の田文を主人公にした青春小説(それすらちょっと怪しいが)」になるのかと思っていたのですが、四巻から五巻にかけてはちゃんと田文が主人公になって孟嘗君らしい活躍をし、筆もいつもの調子を取り戻してきたので中盤から終盤にかけては「孟嘗君」と銘打ってもいいかなあと思えるような展開になりました。
孫臏救出までの話なんて、もうどこの娯楽小説(時代小説+ハードボイルド+ミステリ+クライムサスペンス。欲張りすぎ!)かと思うくらいのエンターテイメントっぷりだったのでびっくりしますた。登場人物も戦国時代オールスター総出演って感じで、孫臏、龐涓、商鞅、田嬰、張儀蘇秦などなど有名どころがあますところなく物語に絡んできてるし、名前だけだったら武霊王や屈原孟子楽毅なんかも登場してます(そういや僕羊って『楽毅』にも出てきたなあ)。プロレスの試合形式で言えばバトルロイヤルって感じで嬉しい反面、小説としては大概安っぽくなりがちなんだけど、そこは安心の宮城谷品質なので、とても質の高い面白いお話に仕上がっています。オチもきれいですごく良かった。はっきりと小人と君子を分けて書いており、勧善懲悪な面もあって軽く説教くさいのですが、嫌味な書き方をしないし細かいことをあまり気にしない潔さや簡潔さがあるので気になりません。まあそれはきっと小説上のテクニックとかじゃなく、ただ単に著者本人の性格によるところが大きいんじゃないかと思うけど。
後書きによると孟嘗君の生涯はあまり史料に残ってないそうなのですが、最終巻の田文の活躍(※主に鶏鳴狗盗)は痛快でございました。