死んだ男の残したものは

長城のかげ (文春文庫)

長城のかげ (文春文庫)

つわものどもがゆめのあと。
楚漢戦争時の脇役たちの目を通してその「時代」を描いた短編集。主人公は項羽劉邦の配下だったり友人だったり子供だったり敵だったりするのですが、彼ら自身の物語というよりは、それぞれの立場から見た項羽と劉邦の人物像や時代の流れが、淡々と、地に足の着いた筆致で描かれていて面白い。司馬遼太郎の『項羽と劉邦』が好きなんだろうなーと思いました(ミもフタもない感想)。
あのがっつりエンタメ系、『孟嘗君』と同じ作者だとはとても思えないくらい格調高い内容。学者というものに対する観察眼が鋭い。思想への造詣も深くて、きちんと「時代」を描き分けられてるのもスゴイです。うーむ、良書。