海の都の物語

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

歴史モノを好むようになったらオッサンのはじまり。ここ一年ほど順調にまるでダメなオッサン化しているわけですが、この本は最高でした。
この人、好きな人物を書くのは下手、というか好きなら好きなほど色々と見境がなくなる傾向にあるのですが(腐女子的な意味で)、好きな国家とか組織を書くのはとても上手です。主人公はヴェネツィア共和国という一つの国。通商に生き、それゆえ現実的な政治・外交感覚に優れ、早々と強固な政体を作り上げ、世界最高の情報収集・分析能力を誇り、最強の海軍力を持ち、リアルト橋のたもとが世界の中心となるほどに繁栄し、数世紀かけてゆっくりと滅びていった国。最後の方の中立非武装をお題目におろおろ対応してナポレオンに征服されるあたりはまるで日本の将来を見てるようで複雑な気分でした。
この手の歴史モノの分類はよく分からんけどとりあえず歴史小説、と言っていいと思います。文学の香りがしました。良著。