アメリカン・サイコ

アメリカン・サイコ [DVD]

アメリカン・サイコ [DVD]

昔一度見てるんだけども、クリスチャン・ベールを見よう週間(自分で設定)のため借りてきた。ものすごーく面白かったけど子供の教育上よろしくないため家に置いておきたくないので今度はDVD注文しなかった。


※ネタバレ注意


生活上の事情により声を立てられないので、まるで手持ちレアカードを見せ合うデュエリストたちみたいな名刺交換シーンとか、床に新聞紙敷いて家具にシートかけてレインコート着て音楽かけてノリノリで同僚に斧を振り下ろすシーンとか、ビデオ撮影しながら音楽かけてノリノリで自分を鏡に映してマッチョポーズでうっとりするシーンとか、音楽かけてノリノリで全裸でチェーンソー持って女を追いかけるシーンとか、そういった数々の腹筋崩壊シーンで自分の声帯の限界に挑戦してしまいました。これ…ホラー…?クリスチャン・ベールの超絶ノリノリ演技のおかげか、昔これを見た数年後に「リベリオン」を見たとき、プレストンがこの映画の主人公と同じ人だということにまるで気が付かなかった。この人無駄にすごすぎる。

主人公はヤングエグゼクティブで、流行とかブランドとか外面ばっか気にして、他人に名前も覚えてもらえないくらいうわべの付き合いしかできないバブル時代に生きた、何の中身もない男。悪魔のいけにえとか特殊な嗜好のポルノビデオが部屋のテレビに流れてるシーンがあるんだけど、殺しのときにそういう自分の好きなものを忠実に再現するというオリジナリティのない…というか「自分」がない人間。音楽のウンチクを語るシーンでも、それ絶対ライナーノーツをまるまる暗記してさも自分の言葉のように言ってるだけだろ、っていう上滑りした意見ばっかだし、そもそも音楽のセレクトからして何のオリジナリティもない。
ただ主人公は自分の空虚さに気付いていて、そのことにいらだちや焦りを感じられるくらいの自意識の持ち主であり(ナルシストでもあるから)、オリジナリティあふれる「自分」を子供っぽい猟奇殺人によって表現しようとするが、しかしそれは果たされない。周囲の他人への無関心さによって、連続殺人という彼の必死の自己アピールすら無視されてしまう。他人が何を考えていようと、どんな人間であろうと、どんな人生を歩んでいようと、自分には何の関係もないとばかりに、主人公の必死の訴え(殺人告白なんだけどね)を日々の物質主義的な生活の中に埋もれさせ、忘れてしまう周囲の人々。「アメリカン・サイコ」って誰のことだ!?そこでポップコーン食いながらこの映画見てる、お前ら全員だ!!という映画。一番まっとうな人間である秘書は、現代ではスイーツ(笑)とか言われるんだろうなと思いつつ、主人公が彼女を殺さずに帰すシーンはとてもよかった。
…前に見たとき「何だ、結局主人公の妄想オチか」としか思わなかった自分バカバカバカ。冒頭とラストのモノローグはあまりに哀切。

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追記。原作を途中まで読んだ。途中まで読んで秋田。ケルアックみたいな記号小説みたいなノワールみたいな感じの小説。発表当時、この小説の残酷描写とエロシーンに物議をかもしたらしいけどそれらの描写もどこまでいっても記号でしかないので、ラルフローレンとかアルマーニとかそこら辺のブランドが羅列してあるシーンと大差なくて「シリアルキラー気取った(実際シリアルキラーなんだけどなんだか真剣味がないので)中二病患者乙wwwwww」としか思えない。この辺が現代人の病か。あ、でも一応グロ注意。